2020年5月1日に着任して、ちょうど1年が過ぎました。着任以来、多くの方々から、たいへん温かいご支援を頂戴いたしました。あらためて深く御礼を申し上げます。新しいフィールドでの活動となりましたが、研究院の諸先生方のお力添えによって、試運転の期間を終えて、定常速度での運行が可能となっている思いであります。また、学部生、大学院生の皆さんと学ぶ中に、多くの「気づき」を感じる日々であります。

 さて、「産婦人科医療を取り巻く社会的ニーズが高い課題に対して、エビデンスを求め解決につなげる」ということを教室の主たる目標としました。現在は、産後うつ病に関する研究を大学院生とともに取り組んでいます。5月10日から「産後うつ病に対する妊娠期の予防的介入に関する全国調査~実態と関連要因の検討~」を行います。これは日本全国の分娩を取り扱う病院もしくは診療所(2,161施設)の産科/産婦人科病棟で勤務している助産師さんを対象とした調査研究です。詳細は別ページに掲載いたしますので、ぜひご協力を賜りたく存じます。そして、同時に新たな手法を用いた、産後うつ病の病態解明を目的とする研究も進めています。

 そして今年度からの目標は、助産学・母性看護学グループとしての有機的なつながりをもった活動です。はなはだ微力ではございますが、初心を忘れずに一意専心してまいる所存でございます。ひきつづきどうぞよろしくお願い申し上げます。

2021年5月吉日

北海道大学大学院保健科学研究院教授

蝦名 康彦

2020年9月のご挨拶 

 2020年5月1日に、北海道大学大学院保健科学研究院創成看護学分野の教授として着任し、4ヶ月あまりが過ぎました。

 保健科学は、病者、疾病回復者、未病者、そして健康者をも対象として、身体的・精神的・社会的に健全な生活を回復維持および増進させるための学問領域であります。本研究院で行う看護や助産に関する教育・研究は、私にとって新たなチャレンジであります。私が専門とする産科婦人科学は、生命の誕生に関わるとともに、女性の生涯にわたる健やかさを守る医学分野です。そして、それは医療の高度化、少子化や高齢化といった社会構造の変化にも密接に絡んでいます。したがって、今後は産婦人科医療を取り巻いている、もう少し広い領域のテーマを対象として、社会的なニーズに対して科学的なエビデンスを求め、そして解決に向けて取り組んでいくことにいたしました。例えば、前任の佐川教授も取り組んでいた「特定妊婦」の問題です。これは、若年妊娠、経済的困窮、未受診などの妊婦を指しており、適切な介入を行わないと、児童虐待等に繋がりかねないものです。妊娠期から、該当者をいかに早期に把握してどのようにアプローチするのか、そして産後に地域保健担当者へいかに繋げていくかが求められています。一方、出生前診断の高度医療化に伴い、着床前診断や無侵襲的出生前遺伝学的検査(noninvasive prenatal genetic testing; NIPT)が可能となりました。がん治療においても、ゲノム情報に基づく個別化医療が現実化し、遺伝性腫瘍の予防・治療が行われています。このような遺伝診療においては、複雑で難解な病態の理解を助けて、適切な自己決定ができるしくみが必要です。遺伝診療部、そして遺伝カウンセリングの体制は整いつつありますが、看護の視点でのクライアントへの支援、継続的なかかわりについて研究が必要と考えております。これまで行ってきたハードの部分としての医学研究を続けてまいりますが、先に述べました保健科学に根ざした「人の心に寄り添うケア」に着目したソフトの部分の研究も両輪として進めてまいります。他臨床施設と有機的に協働させていただき、新たなエビデンスを構築して発信できればと考えております。

 様々な環境で30年あまり産婦人科医として臨床・教育・研究に携わってきた私であります。現場で培ってきた経験やノウハウを、次世代の医療を担うプロフェッショナルを育成するために活かしきりたいと思います。そして、わが国が抱える少子化・高齢化の課題に対し、医療現場の指導者、保健科学の研究者としての役割を担うことができる助産師や母性看護の人材を育成いたします。さらに、一線で働いている医療スタッフに対する社会人教育の場を形成し、ステップアップの一助となればと考えております。

 着任した2020年5月は、コロナウイルス感染対策のため、学生はキャンパス内立入禁止、職員の方々は在宅勤務となっており、ひっそりとした研究室の船出となりました。そのような着任以降、すでに学内外の多くの方々から大変温かいご支援を頂戴いたしまして、あらためて深く御礼申し上げます。はなはだ微力ではございますが、先人から引き継いだ歴史と伝統に新たな頁を加えるべく、一意専心してまいる所存でございます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。