産婦人科学は、産科学、婦人科学、生殖医学、女性医学の4つの専門分野に分かれています。私はこれまで、これらの分野に偏りなく、さまざまな基礎・臨床研究を行ってまいりました。主なものについてご紹介いたします。

  1. 先天性サイトメガロウイルス感染における母子感染リスク因子の解析
  2. 血液凝固異常合併妊婦における周産期リスクの解析と治療法の検討
  3. 自然流産における免疫学的異常の解明
  4. 子宮体癌に関する予後因子の解析
  5. 卵巣がんと血栓塞栓症
  6. 婦人科がんにおけるPET/CTの臨床応用

1 産科学: 先天性サイトメガロウイルス感染における母子感染リスク因子の解析

 サイトメガロウイルス(CMV)は、通常幼児期に飛沫感染で感染しますが、日本人妊婦の抗体保有率は70%以下まで減少しているとされます。CMVは、母子感染により胎児および新生児に形態異常(小頭症、肝脾腫など)や機能障害(難聴、精神発達遅滞など)をきたすTORCH症候群のひとつです。われわれは、CMV IgM抗体陽性のハイリスク妊婦において,胎児超音波異常とIgG avidity (AI) 低値が,CMV先天性感染のリスク因子であることを明らかにしました(Sonoyama A, Ebina Y, et al. J Med Virol. 84, 1928-1933, 2012).そして,先天性感染の予知のためには,AIのカットオフは40%が最適であることを見出しました(Ebina Y, et al. J Perinat Med. 42, 755-759, 2014).

 さらに,CMV初感染を疑うハイリスク妊婦において,単位期間あたりのAI増加率(ΔAI)が高いと先天性感染の頻度が高く,ΔAIによる先天性感染の予知を新たに提唱しました(Ebina Y, et al. J Clin Virol. 66, 44-47, 2015).