2 産科学:血液凝固異常合併妊婦における周産期リスクの解析と治療法の検討
Thrombophiliaは血液凝固異常をきたす病態であり、血栓塞栓症の発症のみならず妊娠異常の原因にもなります。われわれは1220名のコホート研究により,妊娠初期のプロテインS(PS)活性およびフリープロテインS低値の女性は,妊娠高血圧のリスクがあること,そして第XII因子低値の女性は34週未満の早産リスクがあることを発見しました.欧米人とアジア人では,遺伝的背景の違いにより血栓塞栓症のプロファイルが大きく異なるとされています.この研究により日本人妊婦においては,欧米人にみられないようなPS低値の影響が強く認められること.そして第XII因子低値と早産との関連をはじめて示した点が評価されました(Ebina Y, et al. Thromb Haemost. 114, 65-69, 2015).
一方,先天性アンチトロンビン(AT)欠乏症妊婦において,遺伝子変異のタイプと臨床像を検討し,いずれのタイプでもAT補充が良好な周産期予後につながることを明らかにしました(Ebina Y, et al. Exp Clin Cardiol. 20, 145-159, 2014).
また血液凝固異常合併妊婦に対して,低分子ヘパリンの予防投与の有用性を本邦で初めて報告しました(Ebina Y, et al. J Obstet Gynaecol Res. 28, 251-257, 2002 ).