博士後期課程 中村真弥さんの論文がJournal of Human Lactation誌のEditorialで紹介されました。

“Bridging the Gap Between Lactation Care and Research in Human Lactation”

「ヒトの授乳におけるケアと研究の架け橋を築く」

(前略) 中村真弥氏は、乳頭損傷に関する一連の研究を主導しており、本号にも2本の論文を発表している。「深層学習を用いた乳頭損傷評価システムの開発」(Nakamura, Sugimori, & Ebina, 2024)では、授乳中の母親の医療画像を用いて乳頭損傷を識別・分類するための深層学習システムの開発について報告されている。本研究で提示された人工知能(AI)モデルは、亀裂、皮むけ、かさぶたなど、さまざまな損傷レベルを高精度で検出でき、従来は主観的な人間の評価に頼っていた損傷の判定に客観的手法を提供するものである。これは、教育目的や授乳支援が限られている地域において、特に重要な意味を持つ可能性がある。

2本目の論文「乳頭損傷および乳頭痛に対する保湿療法の有効性に関する系統的レビュー」(Nakamura, Luo, & Ebina et al., 2024)では、乳頭損傷への治療法を「高保湿」「中保湿」「低保湿」の3つに分類している。その系統的レビューにおいて、高保湿の介入は、低保湿の介入と比較してより良好な結果と関連している可能性があることが示唆された。

これらの研究は、本号の他の論文とともに、授乳支援の分野を直接的に前進させるものであり、実践者と研究者が連携することで何が可能になるかを示している。今後この分野をさらに発展させるためには、実践者が自身の観察を価値あるデータとして認識し、体系的な研究に値するものと捉えるよう促すことが必要である。また、研究者は現場の臨床実践を深く理解し、現実の授乳支援で生じる課題に基づいた研究を行うために、第一線で活動する実践者との協働を積極的に進める必要がある。教育機関や専門職団体は、メンタリングの機会を提供し、研究デザインや科学的執筆のトレーニングを行い、授乳に関する知識のギャップを埋める研究への資金提供を通じて、重要な役割を果たすことができる。