産後うつ病に対する妊娠期の予防的介入
産後うつ病に対する妊娠期の予防的介入の実施状況と,実施に影響を与える因子について明らかにすることを目的とした。全国の分娩を取り扱う病院および診療所(計2,161施設)の産婦人科病棟に勤務する臨床経験6年目以上の助産師(各施設1名)を対象として,オンライン調査を実施した。回収数は390部(回収率18.0%)であり,有効回答374部について分析した。予防的介入を実施している施設は241件(64.4%)であった。予防的介入実施に影響を与える因子は,施設の特徴としての「精神的支援のためのカンファレンス実施状況」「妊娠期のメンタルヘルスのスクリーニング実施状況」,そして助産師の認識としての「介入の必要性」「マンパワーを割くのが難しい」「病院の収益につながらない」「院内の意思統一が図れない」であった。全国の分娩取り扱い施設の6割以上で,妊娠期の予防的介入が実施されていた。そして,その実施に影響を与える6つの因子が明らかになった。予防的介入を拡大していくために,これらの事項について重点的に取り組んでいく必要性が示唆された。
産後うつ病に対する妊娠期からの予防的介入について文献検討を行い,介入方法とその効果について分析した。医中誌,CiNii,PubMedを使用し,2001年1月から2021年4月までの文献について,キーワードを「産後うつ」「妊娠期」「介入or支援」とし,わが国における研究による原著論文,研究報告,資料で検索した。最終的に14件が分析対象となった。介入方法は保健指導・面談を中心としたもの6件,グループセッションを中心としたもの5件,心理教育とサポート要請トレーニング1件,胎児愛着促進プログラム2件であった。実施時期は妊娠28週以降が6件,妊娠中期以降が4件であった。評価は10件でEPDSを使用しており,そのほか不安や愛着の尺度を使用していた。介入により産後1ヶ月(6件)および3ヶ月(2件)の抑うつ,産後1ヶ月の不安(1件)および児への愛着(4件)に良好な効果を認めていた。以上より,産後うつ病に対する妊娠期からの予防的介入は有効であると考えるが,介入方法の最適化に関してはさらなる研究が必要である。